2011年4月30日

なにがいけなかったのか

「なにがいけなかったのか」というタイトルで、例の読売新聞のヘンテコ記事に突っ込みを入れようと思っていた。

まず、イントロダクションとして、わたしがいかに新聞が好きであるかを語ろうとしたんだ。
 
あなたならわかってくれると思いますが、新聞はわたしにとって「読み書き」と「情報収集」の先輩たちの仕事の成果だから、多いに勉強になる。音楽の演奏に携わっている人が、コンサート会場に行ったりするのと同じことなんだよ。

で、その話の流れで、とはいえ新聞もヘンなところが多々ある。極端な例は、もはや新聞と読んでいいのかどうかさえ分からない、“エキサイティング新聞” こと東スポ。で、東スポがいかに面白いかを書き出したら1000文字くらい優にいきそうになったのでハッと気づいて、話題をゲンダイへと振ろうとしたら、いっそう収集が付かなくなってしまった。

なので新聞の話そのものはやめて、例のツッコミ記事だけを取り上げいたいと思う。
わたしがmixiチェックをしたとき、本当はツッコミどころを指摘するつもりだったのだけど、あまりに驚愕したので、驚きの言葉だけで字数が埋まってしまったのでした。

ちなみに下記がその記事。
読売新聞 2011年1月18日朝刊、かな。
(2011年1月17日03時08分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110117-OYT1T00025.htm
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情報管理大丈夫? 78大学がメールに民間利用

 学内のメールシステムに、グーグルなどの民間企業が無償で提供するクラウド型サービスを採用する大学が増えている。

 読売新聞の調べでは、少なくとも全国の78大学が導入。経費を節減したい大学側と、自社サイトの利用率アップを狙う企業側の思惑が一致した結果だが、データを管理するサーバーが海外に置かれるケースもあるとみられ、専門家からは情報管理の安全性について疑問視する声も出ている。

 読売新聞が全国の主要大学に聞き取り調査をしたところ、国公立大14校、私大64校がシステムの保守管理を一部または全部、企業に委託していると回答した。これは全国で800近くある大学の約1割を占める。

 2007年に日大がグーグルのシステムを採用したのが最初で、その後急増。導入すると、教職員や在学生、卒業生らにメールアドレスが付与され、スケジュール管理機能や、ネット上での文書共有機能も利用できる。アドレス表記は大学で独自運用していた時と同じで、部外者には企業が管理するものとは分からない。
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アンシィさんが指摘もしてくださってますが、なんか短くなってる気がしたら、記事後半が原文から削除されてしまっているようでした。

まあ、残ってる分の原稿だけでも十分に楽しめる。


>学内のメールシステムに、グーグルなどの民間企業が無償で提供するクラウド型サービスを採用する大学が増えている。

うむ。これは事実ですね。

>読売新聞の調べでは、少なくとも全国の78大学が導入。

「調べで」と来て「少なくとも」とは、これいかに。
2文目でいきなり体現止めですよ。

少なくとも78大学が導入を「した」、「しようとしている」、「しなかった」、「したらしい」、「したと答えた」、「したと他のサイトに載ってた」、「白書に出てた」。いろいろあると思うけど、「78大学が導入済みだ」とでも書けばいいのに。

あと、「採用」と「導入」は示している事実の範囲がわずかに異なるので、注意が必要。


>経費を節減したい大学側と、

「節減」だけが目的ではないよ。
大学では毎年、数千のアカウントが新規作成され、一方ほぼ同数が削除・停止される。
こうした作業は膨大だし、期間が集中しているので大変だ。
管理効率の向上ももちろん、自動化(機械化)できる部分を自動化して人的ミスを減らしたり、スピードアップをしたりすることが目的。
コストダウンは、こうした「本来の目的」に対する副次的なもの。
もちろん、コストアップになるなら、まず採用されない。


>自社サイトの利用率アップを狙う企業側の思惑が一致した結果だが、

サイトではなくてサービスね。
サービスは商品(法令とかの用語では「役務」)なので利用率アップというより、普及、つまり営業活動なわけで。

> データを管理するサーバーが海外に置かれるケースもあるとみられ、

主だったサービスが、みな海外のサービスだもの。
サーバが国内にあればいいのか、といえばそうとも限らない。
サーバの物理的所在地を問題にするのは、「管理者が自分でデータセンタ訪問して環境やマシンをいじりたい場合」なのでは?

そもそもクラウドのシステムにおいて、サーバの所在地は「ユーザーは知る必要がない」「サービス提供者は公開する必要がない」。

>専門家からは情報管理の安全性について疑問視する声も出ている。

はい、「情報源の秘匿」ですか。
どこの専門家だろう、そんなことをおっしゃるのは。
たぶん、この記事の論旨にとって都合がいいところだけを抜粋されているのでは、と、疑問視する声も出ている。(わたしが今ここで言っている)

安全性についていえば、サービス事業者は、その安全性こそが死守する対象なのだから、命がけで安全性を守るよ。

「民間がダメ」というなら、電話も「盗聴の恐れがありますから、会って密談しましょう」となるし、郵便・宅配便も「盗難・紛失・誤配送の恐れがありますから、手渡しを原則としましょう」となる。

つまり「サーバが海外=情報管理の安全性が低い」はこの記事でもっとも記事が低質であることを証明している部分。

学内にサーバ管理者を置く方が、よっぽど安全性が低いことを認識しているIT担当者が、せっせと予算ぐりを調整してアウトソースしてるんだよ。
そんなこと取材を通じて得られた情報のはずだ。

> 読売新聞が全国の主要大学に聞き取り調査をしたところ、

と言っているのだから。
この記者と担当デスクはサービス各社が公開している導入事例もきっと読んでいないに違いない。
あるいは読んだ上で無視したのか。
事例は宣伝物だからネガティブなことは書かれない。
読んだ上で、IT担当者に本音を探る取材をしたのか。

この記事が、「こうしたサービスが海外サービスで占められている」ことを問題提議しているなら、NTTデータとか富士通とかにハッパをかける意味があるだろうけどね。

それなら、METI(経済産業省)とか、総務省あるいは文科省が旗を振ってもいいことだと思う。実際にはやっているハズだ。わたしが知らないだけで。
 
 
 
……なんだかひとりで新聞にツッコミ入れてるヘンなヤツ。
これじゃまるで、いや、まさにヒマな人。 ,,Ծ‸Ծ,,