2009年4月28日

「ロールモデル思考法」考

梅田望夫氏が「ウェブ時代をゆく」(ちくま新書)で書いた「ロールモデル思考法」はとても示唆に富む提言だと感じる。
 
「なりたい誰か」でも「目標のあの人」でもなく、「あの人のこの部分、この人のあの部分」の総体として自分の重い描く姿を具体化してくことで、ムダな迷いを減らすことができる。
 

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「好きなこと」「向いたこと」は何かと漠然と自分に向けて問い続けても、すずに煮詰まってしまう。頭の中のもやもやは用意に晴れない。ロールモデル思考法とは、その答えを外界に求める。直感を信じるところから始まる。外界の膨大な情報に身をさらし、直感で「ロールモデル(お手本)」を選び続ける。たった一人の人物をロールモデルとして選び盲信するのではなく、「ある人の生き方のある部分」「ある仕事に流れるこんな時間」「誰かの時間の使い方」「誰かの生活の場面」など、人生のありとあらゆる局面に関するたくさんの情報から、自分と波長の合うロールモデルを丁寧に収集するのである。
(「ウェブ時代をゆく」 p119(第四章 ロールモデル思考法))
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わたしはGTDなどを通じて、とにかく頭から吐き出すこと、リスト化すること、具体化、可視化などを念頭に置いてきた。だからこの「お手本を選び続ける」という手法はすんなりと受け入れられた。これは間違いなく有益な方法だ。

「なりたい自分をどうやって見つけ出すか」について、最近も就職活動に邁進する学生と話し合ったばかり。好きなことをやれ、個性を活かせ、などといわれても、学校では「好きなことをやらせ」「個性を重視」する教育はまだまだ手探りだ。そんな中で、無責任に「個性神話」を押し付けられてきた学生たちのなんと哀れなことかと思う!
 
ロールモデル思考法は、こうした学生に、ぜひ実践してもらいたい考え方だ。
おもいつく限り、「こうなりたい自分」の「部品」を集めてほしい。
 
小学生であれば「将来の夢は野球選手!」でいい。だが中学生なら「宇宙飛行士を目指したい。だから英語と数学と物理を勉強して、肉体も鍛えてJAXAに入る」というロードマップを描いて欲しい。高校生ならロードマップ上で「いつまでにどこまで達成している必要がある」というようなマイルストーンの設置をしてほしい。その中で「人間としての成長」のために、既にいる人(過去の人、あるいは周囲の大人)を手本にするのがよいのではないだろうか。
 
なりたい自分を完璧に定義することは、だれでも困難だし、ひとことで言い切れるような単純な人間には、案外なれない。「目標は“医者”です! “弁護士”です! という特定の肩書きや資格を得るだけじゃなくて、もっと具体的に「どの医者(弁護士)たちのような」といったところまで踏み込むべきだと思う。
 
そうすることで「なぜ(総体としての)医者なのか」「なぜ(具体性をもった)その人たちなのか」を導きだせると思う。
 
書いていたら、すこし自分の意図とズレてきた感じがするので検討を中断。
「ロールモデル」の引き出しを増やすために、学生向けの手法としてはリスト化が有効であるという仮説については、また検討を続ける。