2008年2月2日

ノン・メモ取材について

その場の雰囲気がリラックスしてきたら、そこではじめてメモ帖を取り出すべきである。(p250)

ノン・メモ取材が推奨されるケース

  1. 自己顕示欲が強い相手
    • 政治家、女優、宗教家など、作話性が強い相手。
  2. トップシークレットを握る相手
    • 警戒心が前面に出て、喋ってよいことまで喋らなくなる。
  3. 素人を相手に取材する場合
    • ドギマギして支離滅裂になるか、紋切り型の応えしか帰ってこなくなる。

インタビューの目的は、相手から情報を引き出すことであり、自分の知識をひけらかすことではない。こちらもそのテーマに(強いことを)少しは心得ていることを示してやる必要はある。(=ときには反論も必要である)

インタビューの最後の二、三分間は最も大切なとき。インタビューイはようやく解放されるのをよろこぶあまり、つい口が軽くなるもの。
 ジョン・ガンサー


「インタビューのコツは、まず、相手の武装解除からはじめなければいけない」大宅壮一

「インタビューとは準備である。準備のないところに収穫はない」扇谷正造

「相手の名前や頭文字、職業、肩書きなどを当人に直接聞いてはならぬ」ジョン・ガンサー

 「文章の実習」p248
大宅は、与えられたテーマに対し、三本ないし四本の柱をたてる。それに(原稿用紙の)枚数の割り当てをする。大きな柱の下には、それぞれ三本か四本の小さな柱を立てる。大宅はそれを一覧表にして机の前に貼る。人間、一夜明ければ考えが変わるものである。(中略)構想が固まったら、(一覧表を確定させ)その間に資料をあさる。必要があれば関係者に会って談話を取ってくる。

「文章の実習」p207

「そこで君に一つ忠告しておきたいことがある。いままで新聞社の社会部や文化部の次長として、君は外部へ原稿を依頼する側にあったわけだが、これからは立場が逆になる。執筆者たちが締め切り日や枚数を守ってくれなくて困った経験をもっていると思うが、編集者にそんな心配をかけてはいけない。もの書きのプロだったら、最低限これだけは守りとおさなければいけない。もし締め切り日よりも早く書き上げることができたら、早く渡しても良い」

「それから安請け合いをしないことだね。忙しいときや自分でやれそうもないテーマを与えられたときは、ことわるほうがよい。それが編集者に対する思いやりというものだ」

大宅壮一が新聞社を辞して独立した大隈秀夫に贈った言葉

「文章の実習」p204
人物論のかき方はむつかしい。大宅壮一の名言がある。「からかい、やっつけるのはよいが、斬り捨てにしてはいけない」ということばである。大宅は具体的にはこう言った。

「人物論を書く場合、いちばんよいのは、七誉めて、三けなすことだ。八誉めて、二けなすとどうしてもちょうちん記事になってしまう。六誉めて四けなすと、読者のほうにいや味が先に立ち、何か意図するものがあって、人身攻撃をしているのではないかとさえ思われる。この間の調味料の配合がむつかしい。これができるようになったら、人物
論のライターとしては一人前だ」

大隈秀夫「文章の実習」P189
あるイギリスの文章学者が文章に上達するには次のようにすればよいとすすめている。——(中略) とにかくいい文章だなと思ったものをひろいだす。そうして、それの梗概をつくる。(中略)そうして一週間経ってその梗概を基にして、前の文章を復活してみる。(中略)むしろ梗概にもとづいて新しく文章を書いてみる位の気組みで文章を復活してみる。そうして、その結果できた文章を原文とくらべ、その出来栄えを検討するがよい。
「文章心理学入門」

ボキャブラリーをふやすためには、どうすればよいか。まずはたくさんの文章を読むことからはじまる。その場合、漫然と読み過ごしていては、なんの役にも立たない。ここでは記憶力が必要になってくる。とはいいながら、人間の記憶力には、限界がある。よいことば、きれいな表現に出あったら、すかさず、ノートに書き写すという努力を怠ってはならない。

他人に深い感銘を与える文章をものするためには、書きながら考え、考えながら書くという以外に方法はない。一字一字をゆるがせにしない書き方、文字どおり彫身鏤骨の作業の連続でなければいけない。

「文章の実習」大隈秀男 p94