2008年3月2日

ところがこれからは時間ではなく成果が賃金に反映されるようになる時代です。だから八時間でろうが、十二時間であろうが、成果が上がっていなければ認めてもらえないのです。いまでは「時間の長さで仕事を評価するのは、自分に対する侮辱である」という意識すら芽生え始めています。P138
 
いずれしろ仕事が遅いということは、「有言実行」ならぬ「有限速行」のスピードが求められる時代では、仕事人として致命的な欠陥といえます。(中略)そもそも仕事というのは、九割は雑事といってよく、本当に頭を悩ます、あるいは創造性を必要とする仕事は一割もあればいいほうです。ただ、その一割が重要なのですが、雑事もその積み重ねが大きな仕事の成就を支えるので、決しておろそかにはできません。p144
 
自分の仕事の能力がいまいち伸び切らないと感じている人は、そのなかでも自分の最も得意とするコア・コンピテンシーは何なのかを認識する必要があります。また人に仕事を頼む場合は、既存の評価尺度だけでなく、頼もうとする相手のコンピテンシーをつかみ、その考え方や行動特性に着目すると良いと思います。p145
 
同じ考え方、同じ見方、同じ感じ方のものがいくら集まっても、これからは飛躍、発展、進歩は望めない。違った考え方、違った見方、違った感じ方の人が大勢いて、初めて飛躍もあるし成長もある——これが多様性(ダイバシティ)の考え方です。p147
 
企画書、提案書などを作るとき、目的(趣旨)というものを必ず入れます。「なぜこの企画を立案したか」に始まり、企画を作るに至った背景、企画内容の要点、達成目標、問題点、期限などを、ごく簡潔に記します。大義名分書とは企画書、提案書のこの部分に相当するといってよいでしょう。逆に大義名分書がうまく作れなかったら、その仕事はたいした意味がないのことである可能せいが大きい。p167
 
経過が要約され問題点が浮き彫りになれば「次の一手」が考えやすい。
経過書が持つメリットは、大きく分けて三つあると思います。「全体像がすぐ把握できる」「選択的に迅速理解できる」「推測、予見、予知が可能になる」。経過書を上手に作るコツは、箇条書きにする、比較対照する、図式・図解の多用、イラスト化、キーワードの抽出。p168
 
ビジネス文書の五つの原則。1必ず用件見出しをつくり、最初に結論を持ってくる。2読む気にさせる。3箇条書きを多用し、拾い読みでも分かるようにする。4最初の三分の一で読むのを止めても理解できるようにする。5すべてを肯定的、前向きに書く。p182
 
人は本能的に安定を求めます。しかし、変化の時代は安定性の維持が難しい。そこで大切になってくるのがバランス感覚といことです。(中略)バランス感覚の有無を判定するポイントは五つあります。第一は、「結果を想定する能力があるか」、第二は「視野の広さ」、第三に「自己改革ができるか」、第四は「定石を疑えるか」、第五は「迷った時に人に相談できるか」。多くの情報に接し、多くの人にであり、自らも冷静な観察力、判断力、豊かな感受性などを養う必要があります。p217
 
『朝10時までに仕事は片付ける』
 
#業務の効率向上に、機械化が最適であった時代はおわった。大量生産は今後はますます人手を介さなくなる。人間力を高める方法を、具体的、かつ簡潔に述べている。ただの仕事の作業効率ではなく、仕事自体の質の向上を説いている。生産性があがることで、業務時間は短縮できる。短縮された業務時間は、個人が仕事以外の面で生きる時間を提供する。そこに早起きによる時間確保の力が加われば、本当にその人物が、「人らしく生きる」道を模索できると思う。

社会生態学者P・ドラッカーは次のように言っています。
「重要なことは<すでに起こった未来>を確認することである。すでに起こってしまい、もはや後戻りできない変化、しかも重大な影響力をもつことになる変化でありながら、まだ一般には認識されていない変化を知覚し、かつ分析することである」(『すでに起こった未来』P・ドラッカー著、上田惇生ほか訳、ダイヤモンド社刊)
未来はすいでに起こっているのです。だが、その変化にほとんど人はまだ気付いていません。その変化を発見するには「観察すればいい」とドラッカーは言っています。だが、観察しても気付く人と気付かない人がいます。
その差は何かといえば、決して分析データや調査結果ではなく、思う、感じる、考えるといった人間力なのです。偉大な人間力は、ひらめき、直観、ファジィ(あいまいさ)などによって発揮されることが少なくなく、この種の能力は残念ながらコンピュータには備わっていません。
だから、私たちは安心してこの種の感受性に磨きをかければいい。
そのためには、たえず本物や位置流なもの、いいものに接することです。最高のものは人に感動を呼び起こすものです。だから寸暇を作っては、美術館に行ったり、一流の演奏会に行って感動することが大切だと思うのです。
(中略)
一方、直感やカンは、試行錯誤を繰り返しながら、からだで覚えるものだと思います。問題意識を高めながら追究しているなかで、経験や知識が知恵となったとき、直感が磨かれていくのだと思うのです。
 
『朝10時までに仕事は片付ける』p80
 
#長く引用したが、とても本質的に重要なことを述べていると思う。
 人間が、コンピュータに対し、どのような優越性を持っているのか。それはカンの力だ。
 機械にできることしかできない人間は、今後はますます不要になるだろう。
 知恵と直感に優れた人物たることが目指される領域なのだと思う。
 
拙速。 『孫子』に拙速の言葉がでってくるのですが、そのくだりはこうなっています。
「兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきをみざるなり」
意味はこうです。「戦術がまずいながらも迅速に動いたと言う話は聞いたことがあるが、うまいやり方で長い時間動き続けたという話は聞いたことがない」
要するに、戦いを長引かせて国益になったためしがない、ということです。戦いにあっては巧遅より拙速のほうが良いと理解できます。時間を制するものはよく勝ちを制する。「スケジュールをつくり、つねに前倒しで実行する」ことです。
 
『朝10時までに仕事は片付ける』p44
 
#上手であることは良いことだ。しかし完成が遅い人の作業が早くなるには時間がかかる。
 一方、仕上がりの完成度が低いが、手際良く進める者は、慣れるにしたがって完成度は高まる。
 作業速度こそ、最重要な要素だと言えるだろう。