平野 身内が犯罪者だとかいうことが最近ではすぐに暴露されてしまうでしょう。リアル社会でも人の悪口、陰口はあるんだけど、そのうち消える。でもネットだと、残りますからね。
梅田 ただ、それをみんながおもしろがってどんどん悪い方向に向かうのは、むしろリアル側の狭いコミュニティでより強く起こっている現象なんじゃないですか。ネット上で大事なのは伝播力なのです。書く人がいても、誰も見向きしないというのは、存在しないのと一緒。そう考えることが大切です。これは悪いものだけど面白いぞってリンクを張る人が相当数いると、検索でも上位にくるんだけど、全体でみればそんなにとんでもないことにはなっていないと思う。
平野 その自動排除のシステムは、しかし、良し悪しですね。個々人の理性的な判断がそういうものを淘汰するのであれば結構なことですけど、その良さがわからないせいで淘汰されてしまう優良な情報もあるでしょうし。
『ウェブ人間論』p105
#すごく本質的な話をしていると思う。
「秀才の悲劇は、天才の偉大さをわかってしまうことだ」と塩野七生氏は書いている。天才的なひらめきによって発信された「優良な情報」を誰が拾うのだろうか? それに気付く秀才がどこかにいるはずだ。拾われる石は宝石の原石。マックス・ブロートがいなければカフカはいなかった。人類の宝たる「優良な情報」は淘汰ごときでは消えないのが、「真に優良な情報」の条件だと言える。
秀才の悲劇は、天才の偉大さをわかってしまうところにある。凡才ならば理解できないために幸福でいられるのに、神は、凡才よりは高い才能を与えた秀才に は、それを許さなかったのであろう。「神が愛したもうた者(アマデウス)」の偉大さは理解できても、自分にはそれを与えられなかったということを悟った者 は、どのような気持ちになるものであろう。
「わが友マキアヴェッリ」P541