2008年1月13日

「誉れ高い総大将アガメムノンよ、あなたは大神ゼウスから大笏を賜った人だ。絶大な権力を委ねられている。そうであればこそ、自分の考えを述べるのと同じように、他人の意見に耳を傾けねばなるまい。何人であれ、意見だけは言わせてやれ。しかし、決定権はあなたのものだ」
 
ここで付言しておけば、古代ギリシア人にとって、ホメロスの歌は娯楽である以上に、道徳教育でもあった、ということである。<イリアス>や<オデュッセイア>を聞きながら、
 ――なるほど。アガメムノンはそう考えたのかーー
とかあるいは、
 ――オレもやっぱりオデュッセウスのように生きなきゃいかんなーー
とか、伝説上の英雄たちの原稿に思いを馳せ、それを生きていく糧としていたのである。
  阿刀田高『ホメロスを楽しむために』p76